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会社(法人)が破産したら、役員は責任を負うのか?

最終更新日
2023年 5月30日
著者: 弁護士法人みらい総合法律事務所 
代表社員 弁護士 谷原誠

会社の資金繰りが困難になれば、法人破産を検討することになります。

しかし、会社の役員になっている場合、会社の破産で役員は何らかの責任を負うのではないかと不安に考えてしまうかもしれません。

会社の破産によって破産後に大きく生活が変わってしまうようなことがあれば、事前に知っておきたいものです。

そこで、ここでは会社が破産した場合の役員の責任について解説します。
破産手続きの注意点についても併せて紹介しているので、参考にしてください。

会社が破産した場合の役員の責任について

会社が破産することになった場合、役員にはどのような責任が生じるのでしょうか?

役員の範囲や、破産時の役員の責任についてみていきましょう。

役員とはどこまでを指すのか?

会社組織の中では役職があり、役員は会社の経営における責任を持つ役職に就く人のことを指します。

会社法第329条では、「取締役」「会計参与」「監査役」を役員として定めています。
また、会社法第423条では「執行役」と「会計監査人」も役員等に含まれるとしています。

会社ごとに役職名は異なりますが、経営に従事している役職に就いている場合に役員として扱われると考えられます。

会社破産における役員の責任

役員は会社の代表者の立場にありますが、法律上では会社を「法人格」として扱います。

そのため、個人である役員は、法人格とは別の者として扱われます。

会社の負債に関しても同様の考え方になるため、会社の負債は法人のものであり、個人である役員が負う負債ではないということになります。

会社が破産手続きを終えれば法人格が消滅して負債は無くなり、役員がその負債を請求されるようなこともありません。

しかし、役員が会社の債務の連帯保証人になっている場合や、役員に会社破産の原因がある場合は責任を負わなければならないケースもあります。

会社破産で役員が責任を負わなければならないケース

会社破産で役員が責任を負わなければならないケース
会社が破産しても、原則的に役員が責任を負うようなことはありません。

しかし、例外的に役員に責任が残ってしまうようなケースもあります。

会社の倒産で役員も責任を負わなければならなくなるようなケースと責任内容について解説していきます。

会社の債務の連帯保証人になっている場合

会社の債務は法人格として扱われるため、原則として個人である役員が会社の債務について返済義務を負うようなことはありません。

しかし、会社が金融機関などから融資を受ける時、またはリース契約の締結の際に、役員が連帯保証人になるよう求められることがあります。

会社の規模が小さいほど役員など会社の代表者が連帯保証しなければならないケースが増えます。

連帯保証人になれば、債務に対して連帯して責任を負わなければなりません。

そのため、会社が破産することで債務を返済できなければ、連帯保証人である役員に返済義務が生じます。

そうなると役員が自身の資産から返済しなければならない状況になり、返済できなければ自己破産など債務整理を検討する必要性が出てきます。

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会社(法人)の破産・倒産で連帯保証人が負う責任とペナルティ

 

会社に対する損害賠償責任を負う場合

役員など会社の経営陣は、会社との間で委任契約を締結していると法的に解釈されます。

この委任契約に基づき、役員は善管注意義務と忠実義務という法的義務を負うことになります。

それぞれの義務の内容は、次の通りです。

・善管注意義務(会社法第330条)
善良な管理者の注意義務の略です。
業務を委任された管理者として社会的な地位から一般的に期待される注意義務を指します。

・忠実義務(会社法第355条)
役員が会社のために職務を忠実に行う義務があることを指します。

これら2つの義務を怠ったために会社が損害を被り、破産にしなければならなくなった場合には、法的義務違反として損害を賠償する責任を負うことになります(会社法第423条)。

ただし、役員には会社の経営判断の裁量権が認められており、単に経営に失敗して破産へ追い込んだというだけでは法的義務違反による責任を負うことになりません。

法令に違反するような行為や、明らかに無謀だと考える投資によって会社が大きな損害を被った場合など、特殊な事情でなければ法的義務違反による損害賠償責任を負うことはないと考えられます。

第三者に対する損害賠償責任を負う場合

第三者に対する損害賠償責任を負う場合
会社の債務に対して役員が個人で支払い義務を負うようなことはありません。

しかし、役員が重大な過失や悪意によって職務執行を怠り、取引先や株主などの第三者に損害を与えた場合は、その第三者に対して損害賠償を支払うことが会社法第429条に定められています。

例えば、役員自身が法令違反を犯していた場合や、明らかに契約不履行であると分かっていながら取引先と契約を締結した場合などが挙げられます。

財産散逸防止義務違反の責任を負う場合

会社の破産直前には、債権者を保護するために法人の財産を散逸させないように管理・保全しなければならないという「財産散逸防止義務」が役員にはあると考えられています。

この義務に違反して財産を散逸させた場合、破産手続きの際に責任を負わなければならなくなる可能性が出てきます。

例えば、会社の破産手続の申立て前に特定の取引先にだけ偏頗弁済するような行為が該当します。

財産散逸防止義務違反が認められた場合、散逸行為を行った役員は破産管財人より損害賠償を請求されることになります。

【関連記事】
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会社から借入等をしている場合

家族経営などの場合、個人と法人の境界線が曖昧になりやすいことから金銭のトラブルが生じる場合があります。

役員が会社から借入等をしている場合、その役員は会社に対して借入金を返済しなければならない義務を負っています。

会社側からすると、借入をしている役員に対して賃金請求権を持っていることになります。

この賃金請求権は会社の財産に含まれるため、会社が破産すれば破産財団に属する財産として扱われます。

そのため、当該役員は破産管財人から借入金の返済を請求されます。

破産管財人が否認権を行使した場合

会社の破産手続では、破産管財人によって財産の管理や処分、債権者への配当などが行われます。

破産管財人が否認権を行使すれば、役員は財産の返還請求を受ける可能性があります。
否認権とは、破産手続開始前に行われた破産者の行為の効力を否定し、破産財団の回復を図るための権利です。

例えば、破産手続きの直前に法人の財産を役員の所有権や名義に変えた場合や、役員報酬が支払われている場合などに否認権が行使されます。

本来であれば破産財団に組みいれられたであろう財産になるため、破産管財人から否認権の請求を受け、財産を変換する責任を負うことになります。

【関連記事】
破産管財人の否認権とは?類型・行使の方法・破産者のNG行為

 

刑事責任を負うことになるケースについて

刑事責任を負うことになるケースについて
これまでに紹介してきた役員が負う可能性のある責任は、全て民事上の責任になります。
会社の破産によって役員が負う責任は、民事責任だけとは限りません。

場合によっては刑事責任を問われるようなケースもあります。

刑事責任を負うことになるケースとは、犯罪が成立して刑事罰が科されるということです。

刑事責任を負うことになるようなケースとして、次のようなものが挙げられます。

業務上横領罪

業務上横領罪は、会社の物を横領した場合に成立する犯罪です(刑法第253条)。

例えば、役員が会社の金銭を着服していた場合や、会社の財産を家族や友人のために消費していたりした場合に成立します。

業務上横領罪が成立すれば、10年以下の懲役に科せられます。

特別背任罪

自分もしくは第三者の利益のため、または会社に損害を加えるために悪意を持った行為をし、会社に損害を与えた場合に特別背任罪が成立します(会社法第960条)。

背任罪(刑法第247条)も存在しますが、会社の経営陣である役員が背任行為をした場合は特別背任罪として通常の背任罪よりも重い罪が科せられます。

特別背任罪の法定刑は、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金です。

破産犯罪

破産法では債権を保護するために、債権者の平等を侵害する行為は犯罪行為として定めているものがあります。

債務者の財産の隠匿や損壊、譲渡などを行なえば「詐欺破産罪(破産法第265条)」に問われることになります。

また、破産手続開始決定を知りながら正当な理由なく債務者の財産を取得するようなことがあれば、「特定の債権者に対する担保の供与等の罪(破産法第266条)」に該当します。

会社の破産によって役員が負う責任の対応

会社の破産によって役員が負う責任の対応
会社が破産をしても役員が個人として責任を負うことはないことが原則的な考え方ですが、紹介したように民事責任や刑事責任を負わなければならないようなケースもあります。

会社の破産で役員が個人で責任を負わなければならなくなった場合、次のように対応しましょう。

個人の財産を処分して返済をする

会社の債券の連帯保証人になっている場合や、損害賠償責任を負うことになった場合、個人の財産から返済や損害賠償を行わなければなりません。

請求に応じることなく放置すれば、強制執行により財産が差し押さえられてしまう恐れがあります。

強制執行が行われるようなことになる前に、請求に応じる必要があります。

個人の財産を処分・換価して返済が可能であれば、財産の処分も検討しましょう。

債務整理する

会社の破産で役員が個人で金銭的な責任を負うことになってしまった場合、金額によっては支払いが困難な場合もあるでしょう。

支払が困難な場合には、役員個人も債務整理することを検討しなければなりません。
債務整理方法には、次のような種類があります。

任意整理

裁判所の手続き外で、各債権者と交渉して返済スケジュールや利子を調整する方法です。

大幅な債務の減額は期待できませんが、連帯保証人のついている債務を避けて債務整理することができます。

個人再生

裁判所の手続きにより、債務を大幅に減額する方法です。

自己破産とは異なり、所有する住宅などの財産を手放すことなく債務整理することができます。

裁判所に再生計画を認可してもらう必要があり、減額された債務を再生計画通りに支払っていく必要があります。

自己破産

会社の破産によって役員個人が負うことになった金銭的責任が大きい場合、財産を換価しても支払いが困難なケースもあります。

この場合、自己破産を検討することになります。

裁判所の手続きで自己破産が認められれば、個人の責任は免責されて支払い義務が消失します。

会社の破産手続と同時に申立てを行えば、同じ破産管財人が選任されることになるため、費用を抑えることができます。

弁護士に相談する

会社の破産で役員個人が何らかの責任を負わなければならなくなってしまった場合、会社の破産手続と併せて個人の債務整理等の対応についても弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、現在の状況や財産状況などから適切な対処を選択しやすくなります。

債務整理の問題だけではなく、刑事責任を問われるような場面でもサポートを受けられます。

会社の破産手続によって負うことになる役員の責任問題は、自力で解決することは簡単ではありません。

対応が遅くなるほど問題が悪化するようなケースもあるため、早急に相談して対応を検討する必要があります。

会社が破産した後の役員の生活について

会社が破産した後の役員の生活について
会社が破産をして何らかの責任を負うことになれば、役員は支払い義務によって金銭的に苦しい状況になるのではないかと不安になる方も多いでしょう。

個人再生や自己破産をすれば、負うことになる責任が軽減されて新しい生活をスタートさせやすくなります。

役員として何らかの責任を負ったからといって破産後の生活が苦しくなるとは限りません。

新しい仕事に就くことはできますし、破産をした会社とは別の会社を起業して再び役員に就任するということも可能です。

破産後の生活を含め、個人の債務整理についても検討する必要があるでしょう。

まとめ

会社の破産に至った経緯や、破産手続における知識不足により、役員個人にも責任が追及されるようなケースがあります。

役員の責任を追及されるリスクを回避するためには、会社の破産手続の前に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士は法人破産の手続きを進めながら、役員が責任追及されるようなケースでは法的観点から依頼人をサポートします。

問題が複雑化してしまう前に、なるべく早い段階で弁護士へ相談するようにしましょう。

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