弁護士による会社破産手続・再生手続SOS

会社破産の場合の従業員への対応

著者: 弁護士法人みらい総合法律事務所 
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】会社破産の場合の従業員への対応(経営者向け)

会社が破産すると、最終的には法人格が消滅します。ということは、会社で働いている従業員の仕事もなくなることになります。

では、会社を破産させる時、従業員への対応は、どうしたらよいでしょうか。

☑破産についていつ従業員に説明するか
☑いつ解雇するか
☑解雇予告手当は?
☑退職金はどうすればいいか?
☑従業員の救済措置はあるか?

おそらく、何度も会社を破産させる、ということは稀でしょうから、初めての経験だと思います。わからないことばかりが当然です。

そこで、この記事では、会社経営者のために、会社を破産させる際の従業員への対応について、包括的、かつ、網羅的に説明していきたいと思います。

破産準備と従業員に対する説明

会社を破産させる際に、従業員にどう対応するかは、悩ましい問題です。

仕事がなくなってしまうわけですから、なるべく早く説明、転職活動を始められるようにしてあげたいという気持ちもあるかもしれません。

しかし、ここでは注意が必要です。

破産の準備中に従業員に会社を破産させることを説明してしまうと、取引先に漏れて取引の突然停止、支払停止、商品引き上げ、債権者らの頻繁な訪問等を引き起こし、事業どころではなくなってしまうケースがあります。

また、従業員が賃金や退職金の支払いへの不安から、会社の預金や現金を勝手に確保し、あるいは商品の持ち出しをする、という事態もあり得ます。

さらに、従業員が会社を見放して、会社に出てこなくなってしまう、という事態すらあり得ます。

そうなると、その時点で事業を停止せざるを得ず、破産の準備や破産申立後の破産管財業務に支障が出る可能性があります。

そこで、多くの場合には、破産の決断と破産申立準備は、中小企業の場合には、従業員には説明せず、社長だけで進めたり、一部幹部だけで進めることになります。

そして、準備が整った時点、あるいは、破産申立のために事業を停止する前日や当日に、従業員に説明すると同時に解雇を行う、という方法をとることが多いと言えるでしょう。

従業員に対する解雇

会社の破産手続が開始されても、法律上は当然に従業員との労働契約が終了するわけではありません。

破産手続において従業員に作業をしてもらう必要がある場合には、解雇せず、労働契約を継続させておきます。

しかし、破産は最終的には法人格が消滅しますので、多くの場合には、破産申立前に全従業員を解雇することになります。

この場合の解雇は懲戒解雇ではなく、通常の解雇なので、30日前に予告するか、30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。

また、就業規則に退職金規程がある場合には、解雇予告手当とともに、退職金も支払うことになります。

しかし、会社が破産する場合には、資金がショートしていることも多く、未払賃金や解雇予告手当、退職金などを支払うことができない場合もあります。

そのような場合には、どうなるのでしょうか。

破産手続での給与債権等の取り扱い

破産手続では、破産管財人が会社の財産を全て換価してお金に換え、債権者に債権額に応じて配当をします。

そうすると、高額の債権を有する金融機関等に多く配当され、少額の債権者は少しの配当となります。

しかし、少額債権者でも優先すべきとされる債権があり、「財団債権」「優先的破産債権」等という区別がなされて、他の債権者よりも優先して支払われるものがあります。

たとえば、一例として、以下のような債権は、「財団債権」とされ、随時支払われます。

☑破産財団の管理、換価などのための費用

☑破産手続開始当時に納期限から1年を経過していない破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権

そして、この「財団債権」の中に、「破産手続の終了前に退職した破産者の使用人(従業員)の退職手当の請求権のうち,退職前3月間の給料の総額(その総額が破産手続開始前3月間の給料の総額より少ない場合は破産手続開始前3月間の給料の総額)に相当する部分」という債権があり、解雇した従業員の未払賃金の一部が規定されています。

そして、上記の金額を超える部分については、「優先的破産債権」とされ、やはり優先して支払われることになっています。

しかし、会社に資産がなく、財団債権や優先的破産債権となった部分の支払もできない、という場合もあります。

そのような場合には、どうなるのでしょうか。

未払賃金立替払い制度

そのような場合に労働者を救済する制度として、未払い賃金立替払い制度」が設けられています。

この制度は、使用者である法人が倒産して退職労働者に未払い賃金が発生した場合に、「賃金の支払の確保等に関する法律」に基づいて,独立行政法人労働者健康安全機構が,その法人に代わって,賃金の一部を労働者に支払うというものです。

この制度により支払がなされるのは、退職日の6か月前の日から機構に対する立替払請求の日の前日までの間に支払期日が到来している定期賃金及び退職手当であり、未払賃金総額の100分の80の額です。

詳しくは、独立行政法人労働者健康安全機構のウェブサイトをご参照ください。
「独立行政法人労働者健康安全機構」
https://www.johas.go.jp/