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会社(法人)を破産させるメリット・デメリットとは?

最終更新日
2022年 8月5日
著者: 弁護士法人みらい総合法律事務所 
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】社長のための会社の破産手続きを徹底解説

会社の経営が傾いた場合の選択肢の1つとして「法人破産」が挙げられます。

法人破産は会社の破産手続きです。

法人破産をすれば会社の資金繰りの厳しさや債権者からの取立てに悩まされなくなるというメリットがあるものの、会社を失うというデメリットがあります。

そのため、法人破産をするのであれば慎重に検討することが大切です。

そこで、ここでは会社の破産手続きをした場合の具体的なメリット・デメリットをご紹介します。

会社の破産についてお悩みの場合は参考にしてみてください。

会社の破産とは?

破産とは、裁判所の手続きによって債務をなくしてしまう方法です。

個人の破産だけではなく、会社も破産することで最終的には法人格が消滅し、債務を整理することができます。

まずは会社の破産とはどのようなものなのか簡単に知っておきましょう。

会社の破産について

破産とは、法律に沿って債務を整理する手続きです。

債務が超過してしまい、返済ができなくなってしまった場合に行われます。

破産手続きでは所有している財産を清算し、公平に債権者に配当されます。

会社の破産手続きでは会社の保有する財産に加え、事業なども清算されることになります。

この手続きを行うのは裁判所に選任された「破産管財人」です。
破産管財人によって会社の資産は全て現金化されることになります。

会社と個人の破産の違い

破産手続きは大きく分けると、「個人」と会社が行う「法人」の2種類があります。
個人も法人もどちらも債務を整理することができるという点は同じです。

しかし、個人は破産後に生活の再建を目指していきますが、法人の場合は会社が消滅してしまうという違いがあります。

また、個人の場合は所有している財産が少なければ、破産手続き開始と同時に破産管財人は選任されることなく手続きが廃止される「廃止手続き」というものがあります。

一方で、法人の場合は所有する財産が多額であることが多いことや、従業員なども存在するため、破産管財人による十分な調査が必要 になります。

そのため、会社の破産で同時廃止されることは原則的にありません。

会社の破産と倒産は違うのか?

会社の破産と似たような言葉で「倒産」もあり、混同している方も多いのではないでしょうか。

破産と倒産は異なる言葉です。

倒産とは、経営不振によって事業の継続が難しくなり、事業を辞めざるを得なくなった状態を指します。

倒産には法的な定義がありませんが、破産は法的な債務整理手続きです。

破産手続きをした会社は倒産しているとも言えますが、必ずしも倒産した会社の全てが破産しているとは言えません。

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会社を破産するメリットとは


会社の再建が難しく、資金繰りが困難になってきた場合には破産手続きを検討することになります。

しかし、会社を破産することは決して簡単な決断ではありません。

会社の破産にはどのようなメリットとデメリットがあるか知り、十分に検討する必要があります。

まずは会社を倒産するメリットから見ていきましょう。

メリット1:債務から開放される

会社の破産の1つ目のメリットは、債務から解放されるという点です。

会社が大きな債務を抱えて倒産の危機にある場合、常に資金繰りに悩まされることになります。

再建するには業績を回復させる必要がありますが、急激に業績回復を狙うことは簡単ではありません。

会社の破産手続きをすれば、抱えていた債務から開放されます。

法人としての会社は消滅することになりますが、資金繰りに悩まされ続けていた日々から解放されることになることが大きなメリットです。

メリット2:督促から解放される

会社が借金を背負っていれば、借金を返済できるまで債権者から督促を受け続けることになります。

しかし、破産をすれば債務がなくなることになるため、債権者から督促されるようなこともありません

破産手続きのために弁護士に依頼すれば、債権者に対する窓口が弁護士になります。

弁護士は各債権者に対して弁護士が窓口になったとことを伝える受任通知を送付するため、弁護士に依頼した時点から会社や経営者に対する督促が止まります。

メリット3:債権者の損失も抑えられる

会社が破産手続きを行うことは、債権者にとってもメリットがあります。

破産手続きを行う中で会社の保有する財産や事業は破産管財人によって換価できるものは換価され、各債権者に対して公平に配当されます。

会社が倒産同然の状態で破産手続きを行わずにいれば、債権者は債務を回収できる見込みがないにも関わらず、損金処理も行えません。

破産手続きを行えば債権者は配当を受けられ、破産手続によって回収できなかった分について損金処理することができるため、債権者にかける迷惑を抑えられると考えられます。

メリット4:破産後は利益を自由にできる

破産するまでは会社に利益が出たとしても、全て借金の返済に充てられることになります。

もし破産を検討している中で売上や利益が出たとしても、後日に破産をすればその売上や利益は債権者に分配されてしまいます。

しかし、破産をすれば借金はゼロの状態です。

破産後に別の会社を起こして売上や利益が出た場合には、その売上や利益を自由に利用することができます。

債務を抱えたまま会社を継続して債務を増やすよりも、早い段階で破産して別の会社を設立することがメリットになると言えます。

会社を破産するデメリットとは


会社を倒産すれば借金や取立てに悩まされず、債権者への損失を抑えられるなどメリットがあります。

しかし、メリットばかりではなくデメリットもあることを知っておかなければなりません。

会社を破産することで起こり得るデメリットには、次のようなことが挙げられます。

デメリット1:会社が消滅してしまう

破産手続きを行えば、抱えている債務が全て免除される代わりに会社は消滅してしまいます。

会社内の一部の事業や部署が消滅するのではなく、会社の存在自体が消えてしまいます

会社の財産は全て清算され、経営者の地位なども失われます。

再びその会社で事業を継続することはできないため、同じような事業をするには再び最初から会社を立ち上げる必要があります。

デメリット2:会社の資産や技術などが失われる

破産手続きをすれば会社が消滅するため、会社の保有している資産が失われます。

その資産は手続きの中で債権者への配当に充てられる仕組みです。
これまでに培ってきた会社の資産は消滅し、会社独自のノウハウや技術なども失われてしまいます。

デメリット3:従業員を解雇しなければならない

破産手続きで会社が消滅するということは、従業員は勤め先を失うことになります。
そのため、破産手続きの中で従業員の解雇を行わなければなりません。

長年勤めてきた従業員や優れたスキルを持つ従業員など全ての従業員を解雇しなければならないことは経営者にとって大きなデメリットになると言えます。

また、従業員の収入源を断ってしまうことになるため、経営者として従業員に対して罪悪感を抱くことになってしまいます。

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デメリット4:経営者も破産が必要になる場合がある

中小企業は経営者が会社の債務の連帯保証人になっているケースも多いです。

会社が破産手続きをして会社の債務が免責されたとしても、連帯保証人の債務はそのまま残ってしまいます

そのため、会社の債務の連帯保証人になっている経営者は会社の破産手続と同時に個人の自己破産手続きを行うことが一般的です。

個人の自己破産手続きを行えば連帯保証人としての債務を背負う必要がなくなりますが、経営者自身の財産を失うことになります。

家や車などの財産は換価され、信用情報に傷が残るため新規借入が難しくなります。

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デメリット5:信用が低下し、会社の再建が困難になる

会社を破産して新たな会社を立ち上げることに対する法律上の制約はないため、破産手続きをしても別の事業や会社を立ち上げることができます。

しかし、本来返済すべき債務を支払わずに会社を消滅させることは、経営者の信用を大幅に低下させます。

取引先や金融機関は破産手続きの事実を知っているため、新たな会社を始めようとしても協力を得られない可能性があります。

とくに自己破産当時の債権者だった金融機関からの融資は難しい可能性が高いでしょう。

破産だけが選択肢ではない?法人の債務整理の種類

会社の再建が難しい場合や、債務が超過してしまっている場合に行える債務整理方法は破産だけではありません。

法人の債務整理は大きく分けると「再建型」と「清算型」の2種類があります。
破産は清算型の1つになりますが、それ以外に「私的整理」「民事再生」「会社更生」「特別清算」という方法があります。

それぞれの債務整理方法について解説していきます。

再建型の債務整理

再建型の債務整理は、会社の再建を図るための債務整理方法です。

会社を存続させるために行われるため、破産のように会社が消滅することはありません。
再建型の債務整理は、「私的整理」「民事再生」「会社更生」の3種類があります。

私的整理

私的整理とは、個人の債務整理でいう「任意整理」に該当します。

私的整理は裁判所が介入しない方法で、債権者と直接交渉して借金の減額や返済方法の見直しを行います。

裁判所手続きではないため、債務を整理する債権者を選べるというメリットがあります。

民事再生

民事再生は、民事再生法に基づいて行われる手続きです。

民事再生では債務の一部が免除され、「民事再生計画」という返済のスケジュールに沿って残りの債務を返済していきます。

民事再生の場合、経営陣がそのまま経営権を持った状態で会社の再建を図っていくという特徴があります。

そのため、経営陣を維持しながら会社を再建したい場合や、債務が圧縮されれば完済できるような場合に向いています。

会社更生

会社更生は、会社更生法に基づいて行われる手続きです。

民事再生と同様に債務の一部が免除され、経営の再建を図る方法になります。
ただし、この手続きを利用できるのは株式会社のみです。

そのため、比較的大規模な会社が利用する債務整理方法だと言えます。

会社更生の手続きを行えば株主は権利を喪失し、経営陣は全員が退任しなければならないという特徴があります。

また、民事再生では担保権付きの債権は整理の対象外ですが、会社更生では担保権付きの債権も整理の対象になるという違いがあります。

会社更生は大規模な会社であり、会社自体を存続させたい場合に向いている手続きだと言えるでしょう。

清算型の債務整理

清算型の債務整理は、債務整理することで会社を消滅させる債務整理方法です。

「破産」も清算型の債務整理の1種となり、もう1種類の方法に「特別清算」という方法があります。

破産

破産は破産法に基づいて行われる手続きです。

会社の債務を全額免除すると同時に会社の法人格を消滅させます。

会社の保有する財産は破産管財人によって換価され、債権者へ公平に配当されます。

特別清算

特別清算は会社法に基づいて行われる手続きです。

会社の財産を換価して債権者へ配当するという点では破産と同様ですが、会社が選任した清算人が手続きを進めていくという点が異なります。

破産手続きよりも簡易的な手続きであり、時間や費用を抑えられるという特徴があります。

ただし、株式会社であることや、債権額の3分の2以上を有する債権者の同意が必要になるなど要件を満たさなければ利用できない手続きです。

会社の破産を考えている場合は弁護士に相談しましょう

会社の資金繰りが悪化し、破産を含めた債務整理を検討している場合は弁護士に相談することをおすすめします。

ご紹介したように破産にはメリットだけではなくデメリットもあるため、状況によっては他の債務整理方法が適している可能性があります。

まずは弁護士にどのような債務整理方法が向いているのか相談してみましょう。

早い段階で相談することで、破産以外の方法で対処できる可能性も広がります。

法人の債務整理は専門的な知識や経験が必要になるため、法人の債務整理を得意とする弁護士に相談するようにしてください。

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まとめ

会社の破産手続きを行えば、資金繰りや今後の経営に悩まされることから解放されます。

しかし、従業員の解雇や再建が難しくなるなどのデメリットに加え、経営者が個人で債務整理を行わなければならない可能性もあります。

法人の債務整理方法は破産だけではないので、まずは弁護士に会社の経営状況に合った債務整理方法について相談してみましょう。

今後会社やご自身をどのようにしたいのかという点も踏まえ、適切な債務整理の手続きをとることが大切です。