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飲食店の破産手続きの流れを徹底解説

最終更新日
2021年 7月6日
著者: 弁護士法人みらい総合法律事務所 
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】飲食店の破産手続(一般向け)

この記事では、破産手続きのうち、特に飲食店の破産手続きの流れや注意点について、包括的、かつ網羅的に解説していきます。

法人と個人に分けて解説していきます。

飲食店の破産手続きの特殊性

飲食店は、一定の場所において、店舗を設置し、店舗に集客をして客に飲食をさせることを業務としています。

店舗は、所有しているか、賃借しているか、あるいはモールなどに出店しているか、などの形態が考えられます。

所有している場合には、破産手続き前の売却か、あるいは破産手続きが開始された後、破産管財人によって売却活動がされることになります。

賃借や出店などの場合には、返還手続きを破産手続き前に行うか、破産手続きが開始された後、破産管財人によって行われるか、是非を判断する必要があります。

また、返還手続きを行うためには、賃貸借契約などの解約と原状復帰、敷金返還の処理なども必要となってきます。

原状回復については、店舗の場合、次の賃借人が居抜きで使いたい、というような場合には、免除されることもあります。

飲食店の場合、店舗内に食材や飲料、アルコール類がある場合がありますが、特に食材については放置するわけにいかないので、可能な限り破産手続き開始前に処分することが望まれるでしょう。

それでは、飲食店の破産手続きについて、法人経営の場合と個人経営の場合を分けて解説していきます。

なお、複数店舗がある飲食店の場合で、同日に複数店舗に弁護士が臨場する必要があるようなケースでは、1人の弁護士では対応が難しいので、複数弁護士が所属する法律事務所に依頼をすることになるでしょう。

会社(法人)経営の飲食店の場合

会社(法人)経営の飲食店の破産手続きの流れは、以下のようになります。

(1)債務超過・支払不能
     ↓
(2)弁護士に相談
     ↓
(3)取締役決議等・弁護士と契約
     ↓
(4)弁護士から債権者に受任通知
     ↓
(5)破産申立準備
     ↓
(6)裁判所に破産手続開始申立て
     ↓
(7)破産管財人の選任・打ち合わせ
     ↓
(8)破産管財業務への協力
     ↓
(9)債権者集会
     ↓
(10)配当・破産手続き終結

以上が、会社経営の飲食店の破産手続きの流れですが、社長が銀行等からの借入金やリース、賃貸借契約などの連帯保証人になっているケースでは、社長個人の破産申立をしなければならないケースもあり、その場合には、会社の破産手続きと同時に社長個人の破産手続きも進行していくことになります。

破産の申立は、弁護士に依頼しなければ難しいと思いますので、弁護士に依頼し、都度弁護士に相談し、その助言に従って手続きを進めていくことが大切です。

破産申立前の注意点

飲食店が破産する場合の債権者としては、租税公課、金融機関、リース会社、賃貸人、従業員パートアルイバイト(給与債権)、友人知人(借入金)、仕入れ先などが想定されます。

事前に破産申立の情報が漏れると、特に零細事業者や従業員等の中には、店舗内で換金可能なものなどを持ち出してしまう、ということもあり得ます。

したがって、多くの場合には閉店日や閉店直前に破産申立の事実を従業員等に説明することになります。

【参考記事】会社破産の場合の従業員への対応
https://www.sai-sei.biz/knowledge/shain.html

そして、閉店した場合には、店舗の入り口等に貼り紙を貼って、破産申立予定であること、弁護士が代理していること、店舗内の動産類は弁護士の管理下になること、などを記載しておくことも多いです。

そのようなことをしないと、債権者は、何が起こっているかわからないので、代表者の自宅等に押しかけてくる、ということもあるためです。

破産申立前に、世話になった債権者に優先的に弁済したい、という代表者も多いですが、これは、かえって後で当該債権者に迷惑をかけてしまうことになりますので、やってはいけません。

また、個人資産を守ろうとして、自宅を配偶者に贈与する、というようなことをすると、やはり、後で破産管財人から否認されて取り戻されることになりますので、注意が必要です。

色々疑問点があると思いますが、その都度、依頼した弁護士に相談しながら、決して独断で行動してはいけない、という点にご注意いただきたいと思います。

【参考記事】会社の破産で社長がやってはいけない5つのこと
https://www.sai-sei.biz/knowledge/hasan-5point.html

破産申立と破産手続き

会社を破産させるには、裁判所から破産を認めてもらう必要があります。

そのためには、現在の会社の状況を裁判所に理解してもらわなければなりません。

したがって、かなり多数の資料を収集し、作成していく必要があります。

弁護士は当初会社の状況がわかっているわけではないので、資料の大部分は経営者が主導的に集めていく必要があります。

頑張って資料を集めれば、それだけ破産申立準備も早く進みますので、頑張りどころです。

資料準備が整ったら、弁護士の方で申立書などを作成して、裁判所に対し、破産手続開始申立てを行います。

そして、裁判所の審査を経て、破産手続開始決定と破産管財人選任がなされます。

その後、破産管財人と代表者、代理人弁護士で打ち合わせをして、具体的な破産管財業務が始まります。

代表者は、破産管財人に対し、法律上説明義務などもあるので、破産管財人に協力しなければなりません。

その後、債権者集会が開催され、破産管財人の業務が終了すると、配当がなされ、破産手続きが終結します。

破産手続きが終結すると、会社は法人格が消滅します。

個人破産を申し立てた場合には、個人の方も同時並行的に処理がなされ、個人資産が処分されることになります。

個人で経営する飲食店の破産手続き

個人で経営する飲食店が破産する場合も、手続きの流れ自体は、会社の破産の場合と同様です。

以下のように進んでいきます。

(1)債務超過・支払不能
     ↓
(2)弁護士に相談
     ↓
(3)弁護士と契約
     ↓
(4)弁護士から債権者に受任通知
     ↓
(5)破産申立準備
     ↓
(6)裁判所に破産手続開始申立て
     ↓
(7)破産管財人の選任・打ち合わせ
     ↓
(8)破産管財業務への協力
     ↓
(9)債権者集会
     ↓
(10)配当・破産手続き終結

以上が通常の流れなのですが、飲食店が小規模で債務が少なく、また、破産申立前に店舗の返還など、破産管財人が行うべき作業を完了しているような場合には、破産管財人を選任する必要がない事案もあり、その場合は、「同時廃止」という簡易な手続きで破産手続きが行われることになります。

なお、破産申立を考えた場合に一番気になるのが「費用」ではないでしょうか。

費用に関しては、以下の動画及び記事を参考にしてください。

【動画解説】会社の破産にかかる費用を徹底解説

【参考記事】会社の破産にかかる費用を徹底解説
https://www.sai-sei.biz/knowledge/hasanhiyou.html