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高齢の親の財産管理は誰に相談すべき?財産管理の手法や相談先を解説

最終更新日
2024年 1月5日
著者: 弁護士法人みらい総合法律事務所 
代表社員 弁護士 谷原誠

親が高齢になれば物忘れが多くなり、場合によっては認知症を発症することもあります。

「自分で財産管理をできているのか?」「詐欺や悪徳商法に引っ掛からないか?」など心配になることも増えるでしょう。

また、親族が医療費や介護費を立て替えなければならないのではないかなど疑問も生じます。

認知症など判断能力が低下してからでは資産凍結されてしまう恐れもあるため、早期から対処することが大切です。
ここでは、高齢の親の財産管理の手法や相談先について解説します。

高齢の親に起こりやすい財産管理のトラブル

親が高齢になると、認知症などによって判断能力が低下することがあります。

また、何らかの病気で本人が動いたり話したりできなくなるようなケースもあるでしょう。

こうした場合、さまざまな財産管理に関する問題が起こり得ます。
高齢の親に起こりやすい財産管理のトラブルは、以下の通りです。

親族が医療費などを立て替えなければならない

親が認知症や寝たきりの状態になれば、銀行預金を一人で引き出すことができなくなります。
本人の判断能力があれば、親族が代理で引き出すことが可能です。

しかし、本人の判断能力が失われている場合は、代理権の授与は無効です。
代理権を得ずにお金を引き出すことは違法になるため、介護や医療にかかる費用、場合によっては生活費なども親族が立て替えなければなりません。

銀行口座の凍結

認知症になって繰り返しATMで暗証番号を間違えれば、カードは使用できなくなります。
銀行窓口でお金を引き出そうとしても、行員の受け答えにスムーズにできなければ判断能力がないと判断され、口座が凍結されてしまいます。

この口座凍結は、不正な取引を防ぐことが目的ですが、親族であってもお金を引き出すことはできなくなります。

【関連記事】
親の認知症による財産凍結を防ぐための方法を解説

 

相続対策ができなくなる

遺言書の作成や生前贈与を行うには、本人に判断能力がなければなりません。
判断能力がない状態では相続対策ができず、後から判断能力が無いことが発覚すれば、無効扱いとなってしまいます。

必ずしも遺言書の作成や生前贈与などの相続対策をしなければいけないということはありませんが、本人の意向が分からなければ親族間でトラブルになる可能性があります。
家族に迷惑をかけないためにも、元気なうちに相続対策しておくことが賢明でしょう。

不動産取引ができない

親が認知症などで判断能力がないと判断されれば、不動産取引ができなくなります。
なぜならば、不動産取引には本人の意思決定能力が重視されるからです。

たとえば、親が認知症で施設入所をすることになった場合、住んでいた家を売却して施設入所の費用にしようと考えても、家の売却は名義人本人が行う必要があります。

家族であったとしても、親名義の家は勝手に売却できません。

万が一、本人に意思決定能力が無い状態で売却手続きを進めてしまえば、無効化されてしまいます。

保有している株や証券の取引ができない

本人の判断能力が失われれば、本人が所有する株や証券の取引もできなくなります。

資産運用のために株や証券を所有している人が増加していますが、判断能力が失われれば、これらの資産は換金できずに放置されることになります。

放置していて利益が増えるようなケースもありますが、場合によっては損失がどんどん大きくなってしまうこともあります。

悪徳詐欺に遭うリスクが高まる

近年では、オレオレ詐欺や振り込め詐欺、投資詐欺など詐欺の手法は多様化しており、高齢者が被害に遭うケースが非常に多いです。

相場とはズレな値段で商品を買わされているような詐欺行為もあります。

判断能力が低下していることを狙って繰り返し詐欺行為を働いてくるようなケースでは、気付いた頃には被害総額が高額になってしまいます。

本人には騙された自覚がないため、発見が遅れてどうにもできなくなることも少なくありません。

高齢の親に有効な財産管理方法

高齢の親に有効な財産管理方法

高齢の親が認知症などで判断能力が低下すれば、前項で紹介したようなさまざまな財産管理上のトラブルが起こります。

こうしたトラブルを回避するには、事前に対策しておくことが大切です。
高齢の親に有効な財産管理には、次のような方法が有効です。

親の財産やキャッシュカードの暗証番号を把握する

親にどのような財産があるのか把握していなければ、いざという時に対処が遅れてしまいます。

所有している銀行のキャッシュカードの種類や不動産、証券などだけではなく、マイナスの財産の有無なども把握すべき対象といえます。

とくに医療費や生活費などを支払うための銀行のキャッシュカードは保管場所や暗証番号を共有しておき、物忘れがひどくなった場合に備えておくべきです。

全国銀行協会は、医療費や介護費など認知症患者に必要なお金の場合、親族らの引き出しを認めるようにしていく方針であることを「認知症患者の預金引き出しに関しての方針」にて発表しています。

戸籍抄本など家族関係が証明できる書類と、病院や介護施設などの請求書などお金の使い道の分かる書類を持参すれば、家族も預金が引き出せるというものです。

ただし、原則として「預金本人の意思確認が必要」という方針に変更はないため、必ずしも金融機関で預金を引き出せるとは限りません。

代理人を届け出る

キャッシュカードを預かっていても、必要な時にお金が引き出せないという可能性もあります。

そうしたことが起こらないようにするには、金融機関へ代理人を届け出るという方法があります。

代理人に指定された人が一定の金融取引を行える「代理人カードを」発行してもらえる方法です。

代理人カードがあれば預貯金の管理は楽になり、同一口座内で家計管理をすることができます。
ただし、認知症によって判断能力が低下すれば、代理人カードを継続して利用できなくなるケースもあるので注意が必要です。

家族信託を利用する

家族信託とは、信頼できる家族に財産の管理や処分を任せる制度です。

委託者(財産を預ける人)受託者(財産を管理する人)との間で信託契約を結びますが、財産管理の内容を自由に決められます。

「介護施設の利用料は振込で支払う」「自宅は売却しない」など、委託者が受託者に任せたい内容と禁止したい内容を定めることができ、その内容に沿って受託者が管理を行います。

当事者が元気なうちに家族信託を契約していれば、判断能力が喪失されても引き続き管理できることが最大のメリットです。

ただし、判断能力が喪失してから契約することはできないため、事前に対処しておくことが大切です。

任意後見制度を利用する

任意後見制度とは、本人の代わりに財産管理など法律行為をする「任意後見人」となる人物を決めておく方法です。

本人に十分な判断能力があるうちに、将来的な判断能力の低下に備えるための制度になります。

任意後見人には代理権が与えられるため、介護施設への入所手続きなどの法律行為も委任できるという特徴があります。

ただし、契約した行為のみが認められるため、全ての管理や法律行為を行えるわけではありません。
任意後見人は親族だけではなく弁護士など専門家を指定することも可能です。

財産管理契約(財産管理等委任契約)の締結

財産管理契約とは、本人に判断能力がある間の財産管理を委任する契約です。

任意後見制度は本人の判断能力が低下してから契約の効力が発揮されますが、財産管理契約では契約締結後から直ちに効力が発揮されます。

そのため、財産管管理契約と任意後見制度を組みあわせて締結するようなケースも少なくありません。

この場合、契約締結後は財産管理契約が発効し、本人の判断能力が低下して任意後見監督人が選任された時点で任意後見契約へと移行します。

日常生活自立支援事業の利用

日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者など判断能力が不十分な人が自立した生活が送れるようにサポートするための事業です。

具体的には、生活費や家賃の支払いなどの金銭管理、福祉サービスを利用する際の手続き支援、通帳や銀行印など重要書類の管理などの支援が挙げられます。

都道府県社会福祉協議会または指定都市社会福祉協議会が実施している事業となり、利用者本人が契約を結んでサービスを受けます。

ただし、派遣される生活支援員による支援は1時間につき相場1,200円ほどの費用が発生します。(2023年12月時点)

高齢の親の財産管理をする場合の注意点

高齢の親の財産管理をする場合の注意点
高齢の親の財産を管理する方法を紹介しましたが、こうした方法で対処してもその他の親族とトラブルになってしまうようなケースもあります。

高齢の親の財産管理をする場合には、以下の点に注意しましょう。

親の財産であることを意識する

親の財産管理をすれば、「いずれは相続で引き継がれるから」「少しくらい使ってもバレないだろう」などという気持ちが出てくる方もいるでしょう。

しかし、いくら親の判断能力が低下してしまっていたとしても、親の財産であることに変わりはありません。

自分の財産とはしっかり区別をし、医療費や生活費など親のために必要なことに対して使用する財産であるという意識をしっかり持つことが大切です。

管理内容を明確にしておく

親から財産管理を任された場合、後からトラブルにならないように管理内容を明確にしておくことも重要です。

任意後見契約や家族信託などの制度を利用すれば、管理内容や範囲を明確にできます。

こうした制度の利用と併せ、家計簿をつけるなどして証拠も残しておきましょう。

別の相続人や親族などとトラブルが起こった場合でも、管理内容を記録しておけば客観的に確認することが可能です。

判断能力が低下する前に対処すべき

親の判断能力が低下してから対処する場合、すでに資産凍結が行われている可能性があります。

そうなると、子供が医療費などの費用を立て替えなければならないなど多くのリスクを伴います。

判断能力が低下してから財産管理をするには、法定後見制度しか方法はありません。

法定後見制度は家庭裁判所へ申立て、財産管理を認めてもらう方法です。

判断能力がある間の方が遥かに多くの対処法を選択することができるため、親が元気なうちに財産管理の対策をとるべきといえます。

高齢の親の財産管理についての相談先

高齢の親の財産管理方法や注意手にについて紹介してきましたが、具体的に相談したい場合は「金融機関」「自治体」「弁護士」へ相談することができます。

それぞれの相談先の特徴や注意点をみていきましょう。

金融機関

高齢の親の認知症などの不安がある場合、口座を持つ金融機関へ相談が可能です。

代理人カードの発行に関する手続きなどで分からないことがあれば質問しておき、親が元気なうちに代理人届を提出しておくことができます。

代理人カードがあれば、足が不自由などの理由で銀行へ行けない本人の代わりに医療費や生活費などを引き出せるようになります。

また、金融機関では民事信託の相談ができるケースもあるため、家族信託以外の信託を検討したい場合は相談してみてください。

自治体

各自治体では、高齢者のためのお金の管理や介護に関する相談窓口があります。

自治体ごとに内容は多少異なりますが、相談内容に応じて最適な窓口を紹介してくれることや、介護保険の申請や手続きに関する相談に乗ってもらうことなどができます。

また、日常生活自立支援事業を利用する場合の相談も可能です。

弁護士

高齢の親の財産管理は、健康な場合も認知症が軽度の場合も弁護士に相談できます。

任意後見制度の手続きや、公正証書による財産管理契約の作成など、幅広い制度内容に関する相談が可能です。

また、親が生前贈与をしたいという場合や、遺言書を作成したいという場合などトータルでのサポートを受けることもできます。

弁護士に相談すれば、財産状況や親の健康状態などに応じた適切な対処法を知れることが大きなメリットでしょう。

初回は相談料が無料の弁護士事務所も多いため、まずはどのような財産管理をすべきか相談することから始めてみてはいかかがでしょうか。

まとめ

高齢の親の財産管理は、親の認知症の発症など判断能力が低下してから対処するのでは遅すぎるといえます。

判断能力が十分にあるうちならば、任意後見制度や家族信託などさまざまな対策を取ることが可能です。

弁護士に相談すれば最適な対処法の助言や、それぞれの制度の説明、手続きへのサポートなどを受けられます。

いつ判断能力が失われるかは予測できないため、少しでも早く財産管理に関する対策を講じることをおすめします。