弁護士による会社破産手続・再生手続SOS
著者: 弁護士法人みらい総合法律事務所 
代表社員 弁護士 谷原誠

会社が破産すると、経営者(社長)はどうなるのか?

【動画解説】会社が破産すると、経営者(社長)は、どうなるのか?

自分が経営する会社の破産を予感する時、経営者としては、「会社を破産させると、経営者(社長)は、どうなるのだろう?」という疑問がわいてくると思います。

☑経営者の個人責任
☑経営者も自己破産するのか
☑会社からの借入金はどうなるか
☑経営者が横領、背任などの罪に問われるか
☑経営者は離婚した方がいいのか

おそらく、何度も会社を破産させる、ということは稀でしょうから、初めての経験だと思います。わからないことばかりが当然です。

そこで、この記事では、会社が破産した場合に、経営者(社長)がどうなるのか、について、包括的、かつ、網羅的に説明していきたいと思います。

経営者(社長)は会社の債務を個人的に負うか

まず、「会社が破産した場合、経営者は会社の債務を個人的に負担するか」について説明をしたいと思います。

もし、経営者が会社から金員を借り入れていた場合には、それを会社に返済する必要があります。

具体的には、会社が破産すると、裁判所から破産管財人が選任されます。

破産管財人は、会社の全ての資産をお金に換えて、債権者に配当を行います。

会社の資産の中には、会社が誰かに貸し付けている貸付金も含みますので、破産管財人は、会社の経営者に対する貸付金を回収するため、経営者に対して、貸金返還請求をしてきます。

この請求を防ぐため、破産直前に会社から貸付金相当額の役員報酬を支払うと、それが債権者を害する行為であるとして否認され、いずれにしても破産管財人から返還請求を受けることになります。

以上は、会社からの借入金ですが、会社の取引行為により生じた債務については、原則として経営者個人が負担することはありません。

法人と個人とは法人格が別だからです。

ただし、経営者が当該債務を「連帯保証」していた場合には、会社とともに債務を負担することになります。

会社が金融機関から借り入れをする際、通常は中小企業であれば、社長が連帯保証人となります。

他にも、不動産の賃貸借契約、リース契約などでも、社長の連帯保証を求められることが多いでしょう。

大口の取引先に対する買掛金が滞った際に、取引継続の条件として、社長の連帯保証を求められる場合もあります。

このような連帯保証をしている場合には、社長が会社と連帯して債務を返済する義務を負担しますので、個人資産から返済することになります。

次に、経営者が「損害賠償責任」を負担する場合について説明します。

会社法は、役員が善管注意義務を怠り、会社に損害を与えた場合の損害賠償責任を規定しています。

会社法第423条1項
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

また、支払ができないことを知りながら商品を仕入れたり、粉飾決算書を提出して融資を受けたりして、第三者に損害を与えた場合には、役員個人が第三者に対して損害賠償責任を負担します。

会社法第429条1項
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、その役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

このような事態に陥らないためには、会社の経営が危なくなってきたら、むやみに延命せず、早めに弁護士に相談し、今後の会社経営についてどうするのか、早期に決断していくことが大切です。

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経営者が刑事責任を負う場合

会社を破産させた場合に、経営者個人が刑事責任を負う場合があります。

まず、会社を経営する中で、権限を濫用して自分の利益を図り、横領、背任行為等を行っていた場合には、業務上横領罪や特別背任罪などが成立します。

これらの罪は、会社が破産するかどうかにかかわりません。

これに対し、破産法に規定する犯罪行為があります。

「詐欺破産罪」です。

詐欺破産罪とは、債権者を害する目的で、債務者(会社)の財産を隠匿・損壊する行為や破産手続開始決定後または保全管理命令後に債務者(会社)の財産を取得する行為等を犯罪とするものです(破産法第265条)。

詐欺破産罪で罪になる行為は、以下のような行為です。

☑債務者の財産を隠匿または損壊する行為

☑債務者の財産譲渡または債務負担を仮装する行為

☑債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為

☑債務者の財産を債権者の不利益に処分しまたは債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

☑債務者について破産手続開始の決定がされまたは保全管理命令が発せられたことを認識しながら、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得しまたは第三者に取得させる行為

これらの行為を、「債権者を害する目的」で行った場合には、詐欺破産罪が瀬利率します。

詐欺破産罪で刑事事件になると、経営者個人の刑事罰は、1月以上10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられ、場合によっては、この両方を併科されることもあります。

破産手続中の制約

裁判所に対して、会社の破産を申し立て、破産手続きが開始された場合、破産手続き中は、経営者に何か制約はあるのでしょうか。

まず、破産手続中、破産者は、破産管財人の調査に協力し、質問に回答する義務があります。

会社の場合には、主に社長が破産管財人に協力することになります。

経営者も会社からの役報酬が途絶えることになりますので、収入を確保するため、仕事をしなければなりませんが。では、破産手続中に就職することはできるでしょうか。

これは、可能です。経営者個人が破産し、個人の破産手続が進んでいる場合も、就職して構いません。

ただし、個人の破産手続中には、以下のような職業につくことはできません。

弁護士・税理士・司法書士などの士業
警備員
宅建士の登録
証券会社等の外務員の登録
保険外交員の登録

また、個人の破産手続中は、郵便物が破産管財人に転送され、転居・旅行などの際は、裁判所の許可を得る必要があります。

経営者の家族はどうなるか

では、会社の破産に伴い、経営者の家族は、どうなるでしょうか。

家族が巻き込まれることもあるでしょうか。

会社が破産することにより、経営者の役員報酬がなくなりますので、収入が途絶え、生活が変わることはあるでしょう。

また、経営者が金融機関に個人で連帯保証をしたり、自宅を担保にしていたりするような場合には、自宅が競売になるなどして、自宅を失ってしまうこともあるかもしれません。

しかし、家族が連帯保証をしていたり、役員になっていて損害賠償を責任を負担したりする場合の他、家族が個人として責任を問われることは原則としてありません。

経営者個人と家族は、法人格が別だからです。

もちろん、破産直前に経営者個人が所有する自宅を配偶者に贈与するような行為をした場合には、経営者個人の債権者から、詐害行為取消訴訟などで訴えられることはあります。

会社の破産を検討している経営者の中には、「離婚しておいた方がいいでしょうか」と心配する方もいますが、以上より、離婚する必要はありません。

なお、離婚した場合、相当額の財産分与や慰謝料は詐害行為になりませんが、不相当な部分は詐害行為として取消の対象になりますので、ご注意いただきたいと思います。

経営者も個人破産する必要があるか

中小企業の経営者は、金融機関からの借入金やリース債務について連帯保証をしていることが多いと思います。

会社が破産すると、金融機関やリース会社は、連帯保証人である経営者に対し、残債務について一括して支払うよう請求をしてきます。

この場合、個人資産をもって支払うことができるのであればよいのですが、支払不能ということになると、経営者個人の債務をどう処理するか、という問題が出てきます。

債務を処理する方法としては、

☑任意整理

☑個人民事再生

☑自己破産

などがあります。

自己破産する場合には、会社の破産と同時に申立をすれば、同じ破産管財人が選任されることが多いので、会社と同時並行的に処理がされることになります。

個人の資産のうち、一部を除いて全てお金に換え、債権者に配当されることになります。

会社の破産と同時に経営者も破産するかどうかについては、弁護士に相談して決断することになるでしょう。