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会社(法人)の破産と倒産の違いとは?

最終更新日
2022年 11月14日
著者: 弁護士法人みらい総合法律事務所 
代表社員 弁護士 谷原誠

会社の資金繰りが難しくなってしまい、債務が超過した場合や支払不能に陥った場合に経営陣は、
会社の「破産」や「倒産」について検討することになります。

「破産」と「倒産」は同じ意味の言葉として考える方も多いかもしれませんが、
この2つの言葉は異なる概念を持っています。

「破産」と「倒産」はどのような違いがあるのでしょうか?

ここでは、破産と倒産の違いについて分かりやすく解説します。

会社の破産手続きや、破産以外の手続き方法についても併せてご紹介していきます。

会社の「破産」と「倒産」の違いについて


会社の経営の継続が難しくなってしまって会社をたたむような場合、「破産」や「倒産」という言葉が使われます。

世間一般では「破産」と「倒産」は同じような言葉だと考えられていますが、
法的手段として考える場合別の言葉として理解しておくべきです。

会社の「破産」と「倒産」の意味や違いについてご紹介します。

会社の「破産(はさん)」とは

会社の「破産」とは、破産法に基づいて行われる法的手続きです。

破産では、会社の資金繰りが悪化し債務の返済ができないため
法的手続きによって最終的には会社を消滅させることになります。

この破産手続は破産法にさまざまな規律が決められており、
裁判所を介して手続きが進められていきます。

破産手続きを開始するには裁判所へ申立てる必要があるため、
裁判所を介していない場合破産したとは言えません

会社の「倒産(とうさん)」とは

会社の「倒産」とは、会社の資金繰りの悪化によって債務の返済が難しくなり、
事業の継続が困難に陥っていた状態を指します。

破産法や破産手続きは法律上で存在するものですが、
倒産法や倒産手続きというものは存在しません。

つまり倒産という言葉は世間一般で使われることは多いものの、
法律上の定義がない言葉だと言えます。

しかし、倒産状態に陥った際には法的整理や私的整理を行うことができ
これらの手続きを「倒産手続き」と呼ぶことがあります。

法律に従って進める法的倒産手続きには、
事業を終了させる目的である清算型の「破産」や「特別清算」や、
会社の再建を目的とする再建型の「民事再生」や「会社更生」などが挙げられます。

「破産」と「倒産」の関係性

倒産と破産は異なる言葉であり、
上述したように会社が倒産する手続きにはさまざまな種類の手続きがあります。

その手続きの中の一種が破産です。

つまり、会社が倒産しているからといって必ず破産しているとは限らず、
民事再生や会社更生など会社を再建する手続きの可能性もあるということになります。

倒産と破産の言葉の違いを理解し、状況に応じた最適な倒産手続きを選ぶことが大切です。

【関連記事】
会社(法人)の破産手続きの流れを徹底解説

 

会社の破産におけるメリット・デメリット


会社の倒産手続きの一種である破産は、
最終的に会社が消滅する手続きです。

会社が消滅するというデメリットがあるものの、
会社にとってデメリットだけではなくメリットもあります。

破産のメリットとデメリットを理解した上で、
手続きの検討を行いましょう。

破産のメリット

破産という言葉にはマイナスイメージがあるかもしれませんが、
会社にとってはメリットもある手続きです。

まずは破産をするメリットから見ていきましょう。

【関連記事】
会社(法人)を破産させるメリット・デメリットとは?

 

メリット①:返済の督促が止まり、資金繰りの悩みから解放される

会社の破産を行う場合、
専門的な知識が必要になるため弁護士に依頼をすることが大半でしょう。

弁護士に依頼をすれば、
各債権者に対して受任通知が即座に送付されます。

受任通知とは弁護士が代理人になったことを知らせる通知であり、
債権者とのやり取りは弁護士が行うことになります。

そのため、返済の督促は止まり、資金繰りの悩みから解放されます。

メリット②:債務が消滅する

破産手続きを行えば、最終的に会社の法人格が消滅しますので、
それによって会社が負う債務は全て消滅します。

破産手続きが開始されれば、会社の持つ資産は換価されて債権者に分配されます。

そして、その残りの債務は会社が消滅することによって、法的になくなります。

どれだけの債務があっても消滅することになるため、
破産手続きは債務の返済が難しい状態に陥っている会社の経営者にとって大きなメリットになると言えます。

破産のデメリット

破産はメリットもありますが、デメリットもあります。
手続きを開始する前に、デメリットについても理解をしておくことが大切です。

デメリット①:会社が消滅する

倒産手続きの中でも破産は清算型の手続きです。

そのため、裁判所より破産手続きの開始決定が出された時から会社は解散することになり、
手続きが終了すれば会社の法人格は消滅します。

つまり、これまで会社で構築したノウハウなども失われるということになります。
事業を継続させたいという場合であれば破産手続きではなく、他の倒産手続きを検討すべきでしょう。

デメリット②:会社の財産も従業員も失うことになる

破産手続きでは会社の財産を換価して債権者へ分配し、残りの債務が消滅します。

そのため、会社の持つ財産は全て処分されることになります。

そして、従業員も解雇という形になってしまいます。

ただし、破産手続き中に事業を譲渡することで資金を獲得できるような場合は、
事業を譲渡できるためノウハウや一部従業員の雇用継続が期待できます。

デメリット③:経営者も債務整理が必要になるケースがある

会社の規模が小さい場合、経営者が会社の債務の連帯保証人になっているようなケースが多いです。

この場合、会社の債務は破産手続きによって消滅しても、連帯保証人の債務は免責されません

そのため、経営者に借金の督促が行われるようになります。

経営者も支払いが難しい場合には自己破産や個人再生などの債務整理手続きを行う必要があり、
その場合は経営者自身の財産を処分が必要になります。

【関連記事】
会社が破産すると、経営者(社長)はどうなるのか?

 

破産以外の倒産手続きの種類と特徴


会社の倒産手続きは破産だけではなく、複数の手続きが存在します。

倒産手続きの種類は「清算型」と「再建型」の2種類に分けることができ、
清算型は破産手続きと同様に会社が消滅する手続きです。

一方で、再建型は会社を再建する目的を持つ手続きになります。
清算型と再建型の中にも複数の手続きがあるので、それぞれの手続きの種類と特徴をご紹介します。

特別清算

特別清算は破産と同じ清算型になるため、会社は最終的に消滅します。

しかし、破産とは異なり、特別清算は会社法に基づく倒産手続きです。
そのため、手続きの規定が異なります。

まず、破産法は個人でも法人でも利用できますが、特別清算手続きは株式会社しか利用することができません。

そして、手続きの開始条件にも大きな違いがあります。

破産は債務を返済できなくなった場合に手続きが開始されますが、
特別清算は「債務超過の疑いがあること」が開始条件になります。

つまり、債務の返済ができなくなりそうな疑いのある時点で手続きを行うことができ、破産よりも開始条件が緩やかだと言えます。

また、特別清算では清算人が中心になって手続きを進めていきますが、清算人は会社が選ぶことができます。

破産手続きでは全く知らない弁護士が裁判所によって選任されますが、
特別清算では会社の事情を知った人が手続きを進められるという点もメリットでしょう。

そして、債権者の同意も手続きでは重要なものになるため、債権者の同意が得られないようなケースでは不向きな手続きになると言えます。

【関連記事】
会社(法人)の特別清算手続きとは?破産や任意整理との違いを解説

 

民事再生

民事再生は破産や特別清算とは異なる再建型」の手続きになるため、会社の再建を目的にしています。

民事再生法に基づく手続きとなり、個人でも法人でも利用することができる手続きです。

民事再生では会社の債務の一部が圧縮され、残債を会社が完済できるように再生計画を建て、
その計画通りに返済を行っていきます。

債務が一部圧縮されますが、破産手続きのように財産を全て処分する必要はなく、一定の財産の保有が認められています。

民事再生における再生計画には、「自力再生型」「スポンサー型」「清算型」の3種類があります。

自力再建型

自力再建型は、名前の通り会社が自力で再建を目指す方法です。

民事再生によって圧縮された債務を、会社が事業から得た収益で弁済していきます。
この再生計画は、事業の収益の確保が想定できる会社でなければ選択できません。

スポンサー型

資金援助を受けられるスポンサーを探し、スポンサーの援助を受けて再生計画を実行する方法です。

スポンサー型では民事再生の申立てと同時にスポンサーを公表するため、会社の信頼性の低下を防げるというメリットがあります。

ただし、スポンサーを見つけることは簡単ではないケースも多いですし、スポンサーが見つかっても経営陣は事業を売却することになるため経営から退くことになります。

清算型

民事再生の再生計画の中にも清算型というものがあります。

清算型では事業の一部またはすべてを別の会社に譲渡し、その代金で弁済を行います。
この方法では会社自体は清算されることになりますが、別会社で事業の継続が可能になります。

【関連記事】
会社(法人)の民事再生手続きの流れ

 

会社更生

会社更生は民事再生と同様の「再建型」の手続きですが、
会社更生法に基づく手続きであるという点に違いがあります

大規模企業を想定した手続きであり、株式会社しか利用できません

会社更生の手続きでは、一定の財産の保有が認められながら、債務を圧縮して会社の再生を目指します。

裁判所によって選任された更生管財人が手続きを進めていき、債権者の同意を得て弁済計画を遂行していきます。

民事再生では経営陣の入れ替えは必須条件ではありませんが、
会社更生では経営陣の入れ替えが必要です。

私的整理

ここまで紹介した倒産手続きは全て裁判所を介して行う「法的整理」でしたが、裁判外で行う「私的整理」という方法もあります。

裁判所を介すことなく債権者と債務者である会社が話し合い、債務の圧縮や返済スケジュールの見直しなどを行います。

基本的には再建型の倒産手続きになります。
裁判所が介入しないため財産が処分されることもなく、柔軟な対応を行うことができるというメリットがあります。

ただし、債権者の同意が得られなければ実現することはできません

会社の倒産手続きを行うまでの流れ

ご紹介したように会社を倒産する方法は破産だけではなく、さまざまな手続きがあります。

どのような手続きを選択する場合でも、専門知識が必要になるため弁護士へ相談することが必要になるでしょう。

そこで、弁護士へ相談してから倒産手続きを行うまでの流れを簡単にご紹介します。

弁護士へ相談

倒産手続きには複数の種類があり、債務金額や会社の収益など状況によって最適な手続きは異なります。

破産しか方法がないと考えているようなケースでも、収益やスポンサーが期待できれば民事再生できる可能性があります。

反対に、会社をどうしても残したいと考えていても、債務状況から再建は難しいようなケースもあるでしょう。

こうした判断は知識がなければ難しいため、まずは会社の倒産に詳しい弁護士に相談してみてください。

取締役会の決議

弁護士に相談して適切な倒産手続きを選定した後は、まず取締役会の決議を行うべきでしょう。

弁護士からの話を踏まえて今後の手続きに関しての説明を行います。
この時に、事業を停止する日程も決めておく必要があります。

弁護士への依頼、受任通知の送付

破産手続きも含めて倒産手続きはご自身で行うことも可能ですが、非常に複雑な手続きです。

そのため、法的な知識を持つ弁護士に依頼をすることをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、弁護士から債権者宛に受任通知が送付されます。

そうすると、債権者は督促を含めて会社と直接やり取りすることが禁じられます

倒産手続きの準備、申立てへ

倒産手続きを行うことが決まれば、申立てに必要な資料の収集を行います。

手続きごとに必要になる書類は異なるため、弁護士の指示に従って書類の準備を行いましょう。

書類の準備と併せて弁護士から事情聴取も行われるため、会社が破産に至った原因や経緯を詳しく説明してください。

こうした準備を行い、全てが整えば手続きの申立てを行っていきます。

まとめ

今回は、会社の「破産」と「倒産」の違いについて解説しました。

破産と倒産は同じ意味ではなく、倒産手続きの中のひとつに破産という方法があります。
破産手続きをすれば債務は全て免責されますが、会社は消滅してしまいます。

会社を残したい場合には、民事再生や会社更生など他の倒産手続きの方法もあるため、
会社の状況に合った倒産手続きを検討してください。

会社の破産や倒産は専門知識が必要であり、複雑な問題です。

会社や従業員のためにも一人で悩まずに、弁護士へご相談ください

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