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会社(法人)破産の手続きで必要になる書類とは

最終更新日
2022年 11月29日
著者: 弁護士法人みらい総合法律事務所 
代表社員 弁護士 谷原誠

会社(法人)破産をするには、裁判所へ申立てを行います。

裁判所へ申立てを行うには破産手続開始の申立書の提出だけではなく、
多岐に渡る書類や資料の添付が必要です。

そのため、あらかじめ必要な書類や資料を収集することが
手続きをスムーズに進めるためのポイントになってきます。

ここでは、会社(法人)破産の手続きで必要になる書類をご紹介します。

これから会社破産の手続きを行う経営陣の方は、是非参考にしてください。

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会社破産手続きの申立で必要になる書類

会社破産手続きの申立で必要になる書類
会社破産手続きで必要になる書類は、大きく分けると2種類があります。

「会社破産手続きの申立に必要な書類」と「申立書や報告書を疎明するための書類」です。

まずは、会社破産手続きの申立に必要な書類からご紹介します。

破産手続開始申立書

会社破産の手続きを行う場合、管轄の裁判所に対して申立てを行うことが法律で定められています。(破産法第5条)

手続きを開始するには、「破産手続開始申立書」という書類の提出が必要です。

そして、この破産手続き開始申立書は、
最高裁判所規則で定める事項を記載した書面でなければならないことが法律で規定されています。(破産法第20条)

しかし、個人の破産手続きとは異なり法人の破産手続きでは、
破産手続開始の申立書の書式が裁判所において準備されていないことも多いです。

申立書は本やインターネットで書式を検索できますが、
弁護士に依頼すれば作成を任せることができます。

登記事項証明書

破産手続開始の申立書には、法人の登記事項証明書の添付が必要です。

登記事項証明書とは会社(法人)の登記事項を記載した書類で、
会社の所在地や代表者などが実在するのかどうか確認するために必要になります。

登記事項証明書は法務局に直接出向いて取得することもできますが、
オンラインや郵送での請求も可能です。

ただし、情報が古い登記事項証明書は認められない可能性があります。
原則的には申立て日の3カ月以内に発行されたものを添付します。

取締役会議事録もしくは同意書

会社破産をする場合、取締役の同意が必要です。

取締役の過半数が出席した取締役会において、
出席した取締役の過半数の賛成が賛成すれば破産手続きを行うことができます。

そのため、取締役会で議決が行われたことや、
過半数が賛成したことを証明できる議事録もしくは同意書を提出します。

債権者一覧表

債権者一覧表とは、
会社が債務を負っている相手や金額を一覧にした書面です。

債権者一覧表は破産手続開始申立書に添付しなければならないことが法律で定められています。(破産法第20条2項)

債権者の名前や連絡先、住所、債務内容(債権の種類や金額、借入時期)、担保の有無、保証人の有無などを記載します。

財産目録

財産目録とは、会社・法人が保有する全ての財産を一覧にした書類です。

破産手続きでは財産を換価して債権者に分配し、
残りの残債が免責されることになります。

そのため、財産の把握が必要になります。

対象となる財産は全てものであり、「預金目録」や「保険目録」「不動産目録」など項目ごとにわけて財産目録へ記載します。

報告書

破産手続申立書には、申立ての趣旨や経緯などを詳しく記載しません。

そのため、報告書として負債の具体的な状況や
破産手続きに至った経緯などを詳しく記載し、
申立書の補完をするために添付します。

また、申立書には記載しない会社の業務内容や体制、
従業員に関する情報、営業所や子会社などの情報も記載します。

賃借対照表・損益計算書録

破産手続の申立書には、直近の賃借対照表・損益計算書録を添付します。

そのため、もし賃借対照表・損益計算書録を作成していない場合には、
新たに作成する必要があります。

税理士に決算書などの作成を依頼している場合、
賃借対照表・損益計算書録も作成してもらうことができるでしょう。

委任状

会社破産手続きは複雑であり、
専門知識が必要になるため、弁護士に依頼することが一般的です。

弁護士に依頼する場合には、委任状を弁護士が作成して申立書と併せて裁判所へ提出します。

委任状を添付することで、弁護士が申立て代理人であることが証明されます。

申立書や報告書を疎明するための書類

申立書や報告書を疎明するための書類
破産手続開始申立書を提出する際には、
申立書や報告書に記載していることを疎明するための書類を添付します。

こうした書類の添付で事実関係の確認が行われ、
破産手続きを開始すべきかどうか判断されることになります。

申立書や報告書の事実関係を明らかにできる書類は、次の通りです。

決算書

会社の負債状況や売上状況を明確にできる資料は、決算書です。

賃借対照表・損益計算書録も申立書を一緒に提出しますが、決算書も提出することが必須といえます。

決算書は少なくとも3期分は提出すべきです。

それよりも以前の決算書も破産手続開始後に提出が求められる可能性もあるため、処分せずに保管しておくようにしましょう。

預金口座の通帳写し

会社・法人名義の預金通帳の写しは、財産目録等を疎明するために必要な資料です。

コピーを取り、添付します。

破産手続きが開始されれば、通帳は破産管財人が引き継ぐことになります。

不動産登記事項証明書、査定書、賃貸借契約書など

会社・法人の名義で不動産を所有している場合は、不動産登記事項証明書を添付します。

不動産に関する書類も財産目録を疎明するための書類になります。

不動産登記事項証明書は法務局で取得が可能です。

不動産の査定書もある場合、査定書も一緒に添付します。

また、会社・法人の名義で不動産の賃借をしている場合は、
不動産賃借契約書が必要になります。

自動車検査証、査定書など

会社で社用車を使用している場合、
車の名義は法人や会社になっています。

そのため、こうした車両も財産目録に記載されることになり、
自動車検査証を添付します。

査定書も取得できる場合はあらかじめ取得しておくとよいでしょう。

従業員名簿、就業規則、賃金台帳等

従業員がいる場合は、
従業員名簿や雇用契約書、就業規則なども添付します。

また、賃金台帳も添付し、
賃金や退職金などに未払いがある場合は債権者として債権者一覧表に記載します。

その他

財産目録を疎明するための書類として、
会社が有価証券を保有している場合には有価証券の写しを添付します。

また、保険に加入している場合には保険に関する写しや解約返戻金証明書などが必要ですし、
機材や什器、商品在庫がある場合には現在の価値や保有状況などがわかる資料や契約書が必要になります。

その他にも財産や負債に関する資料がある場合には、準備して提出できるようにしておくべきです。

会社(法人)破産手続きに向けてどのような準備をすべきか?

会社(法人)破産手続きに向けてどのような準備をすべきか?
会社破産手続きを開始するために裁判所へ提出する書類を紹介してきましたが、
書類の種類が膨大になるため、

何から始めればよいのか困惑してしまう方も多いでしょう。

破産手続き開始に向けて準備を行う場合、
次のような手順で進めるとスムーズに書類や手続きを行いやすくなります。

破産開始手続きの申立て時期を検討する

破産手続きを行うにあたり、申立てをする時期は重要になってきます。

なぜならば、破産手続きが開始されれば会社は清算に向かって止まることなく進んでしまうからです。

もちろん手続きが開始されれば債権者に返済をしなくてもよくなるというメリットがありますが、
会社の財産は破産管財人によって管理されることになります。

また、破産をすれば従業員や取引先などにも迷惑をかけることになるため、
破産手続きの申立てを行う時期については十分に検討すべきだといえるでしょう。

債権者の調査・確認を行う

どのような債権者に対してどのような債務を抱えているのか、
申立て前に調査して確認しておきましょう。

金融機関だけではなく、取引先や従業員の給料等、法人税や社会保険料などの公租公課も債権の対象になります。

破産手続きにおいては債権者が利害を有することになるため、
あらかじめ把握しておくことは大切です。

調査時だけではなく、破産手続申立て時に未払いになると想定される債権者に関しても忘れずに調査してください。

債権者の調査・確認は、破産手続きにおける債権者一覧表をスムーズに作成しやすくするという目的もあります。

財産の調査を行う

破産手続きでは会社や法人名義の財産は破産管財人によって管理され、最終的に財産は換価されて債権者へ分配されます。

そのため、破産手続開始申立書には財産目録を添付しなければなりません。

申立てを行う前にどのような財産を保有しているのか確認し、
査定できるものは査定しておくべきです。

会社が保有する資産として代表的なものは次の通りです。

・現金や預貯金
・不動産
・車両
・売掛金、貸付金などの債権
・保証金や出資金
・有価証券
・任意保険
・商品や在庫品
・機械類
・什器、備品など

 
こうした財産は、破産手続きの前に売却・処分してしまうことは避けましょう

申立て前に売却・処分して特定の債権者への分配などを行ってしまえば、
破産手続きが認められない恐れがあります。

破産手続は公平に行われるべき手続きです。

売却や処分がどうしても必要な場合には弁護士に相談するようにしましょう。

契約関係の確認・整理

破産手続きが開始されれば、破産管財人によって契約関係は解除されて会社の清算に向けて手続きが進められていきます。

そのため、契約中の仕事の有無や内容、
進行具合などは破産手続きの申立てを行う前に確認して対応を考えておくべきです。

また、契約関係には雇用契約や不動産の賃借契約も含まれます。

従業員の解雇手続きの確認

会社が破産すれば会社自体が失われるため、
従業員も解雇しなければなりません。

一般的には、会社破産手続きの申立てもしくは破産手続開始決定の前に従業員の解雇を行います。

従業員を解雇する場合、少なくとも30日前までに解雇予告しなければならず、
予告が30日以内であれば「解雇予告手当」を支払うことが法律で定められています。
(労働基準法第20条第1項・2項)

しかし、30日前までに解雇予告すれば会社の破産が察知されて混乱を招く恐れがあります。

一方で、30日以内に解雇予告すれば解雇予告手当が発生することになるため、
従業員への解雇通知の日程や解雇予告手当、退職金など従業員の解雇に関して事前に検討しなければなりません。

また、従業員を解雇すれば雇用保険や社会保険の処理なども必要になるため、
解雇に伴い必要となる手続きや手順はあらかじめ知っておくべきです。

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会社(法人)破産の場合の従業員への対応

 

会社や事業所の閉鎖、明け渡しの検討

会社が破産すれば、賃借している会社や事業所、倉庫などの不動産を閉鎖して賃借人へ明け渡さなければなりません。

しかし、会社の規模が大きいほど設備や什器、機器などが多くなるため、明け渡すために高額な費用が発生すると考えられます。

そのため、明け渡しの時期や費用などをあらかじめ検討する必要があります。

依頼する弁護士を選定する

依頼する弁護士を選定する
会社破産手続きは非常に複雑であり、専門知識が必要になります。

ご自身でも申立書を準備して申立てをすることはできますが、
書類が不十分であれば再提出が必要になり、手続きをスムーズに進めることができません。

また、書類に不備があったことで申立てが認められないようなケースもあるでしょう。

破産手続をスムーズかつ的確に行うためにも、
会社破産手続きの申立てを行う前に弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、申立書の作成から書類の作成・収集など全てを任せることができます。

多くの弁護士事務所が存在しますが、
依頼するのであれば会社破産に精通した弁護士が在籍する事務所を選ぶべきでしょう。

弁護士にもそれぞれ得意な分野、専門している分野があります。

とくに会社の破産手続きは専門性が高くなるため、
破産手続きの実績がある弁護士事務所を選ぶようにしてください。

まとめ

会社の破産手続きでは多くの資料作成や収集が必要になります。

正確に資料を収集して作成することが破産手続きの第一歩になるといえます。

経営陣だけで対応するには難しい点も多くなるので、まずは弁護士へご相談ください。

破産手続きに向けて準備や今後の対処など心強いサポートを受けることができます。

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