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詐害行為取消権

「詐害行為取消権」(サガイコウイトリケシケン)とは、債務者が、債権者を害することを知ってした法律行為の取消を裁判所に請求できる権利です。民法第424条に定められています。

たとえば、銀行に1億円の借金があるA会社が、その唯一の財産である不動産を、社長の妻に無償で贈与し、すぐに倒産したような場合に、銀行は、裁判所に対して、A会社の妻に対する贈与を取り消して、不動産をA会社に取り戻すように請求することができます。

要件は、次のとおり。

  1. その行為によって、債権者に支払う原資となる債務者の総財産が減少して、その結果、債権者に全額弁済ができなくなってしまうこと。
  2. その行為が債権者を害することを、債務者も、転得者(上述の例での妻)も知っていたこと。

したがって、贈与などをしても、残りの財産で債務の弁済をできるような場合には詐害行為にはなりません。また、善意の第三者の譲渡したような場合には詐害行為にはなりません。ある行為が詐害行為にあたるかどうかについては、法律家による専門的判断が必要ですので、事前に相談することをおすすめします。

また、この詐害行為取消権については、次のような判例があります。

  1. 相当の価格による売却であっても債務者の財産が消費しやすい金銭に変わるから詐害行為となる。(大判明治39年2月5日民録12−136)
  2. 債務者がある債権者に対する債務を弁済するため相当の価格で不動産を売却したときは、特に他の債権者を害する意思がない限り、これをもって詐害行為ということはできない。(大判大正13年4月25日民集3−157)
    →いわゆる不動産の任意売却です。
  3. 債務者が、他の債権者に十分な弁済をなしえないためその利益を害することになることを知りながら、ある債権者のために根抵当権を設定する行為は、詐害行為になる。(最判昭和32年11月1日民集11−12−1832)
  4. 債務超過の状態にある債務者が一債権者に対してなした弁済は、それが債権者から強く要求せられた結果、当然弁済すべき債務をやむなく弁済したものであるだけでは、これを詐害行為と解することはできない。((最判昭和33年9月26日)
  5. 債務超過の債務者が、特にある債権者と通謀して右債権者のみに優先的に債権の満足を得させる意図で自己の有する重要な財産を右債権者に売却して、右売買代金債権と右債権者の債権とを相殺する旨の約定をした場合には、たとえ右売買価格が適正価格であるとしても、右売却行為は詐害行為になる。(最判昭和39年11月17日)
  6. 離婚に伴い財産分与をした者が、すでに債務超過の状態にあったとしても、その分与が民法768条3項(財産分与)の趣旨に反して過大でない限り、詐害行為として取消しの対象とはならない。(最判昭和58年12月19日)
  7. 離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は詐害行為とならないが、当該配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分は慰謝料支払いの名を借りた金銭の贈与ないし対価を欠いた新たな債務負担行為であるから、詐害行為の対象となりうる。(最判平成12年3月9日民集54−3−1013)
  8. 株式会社を設立する新設分割がされた場合において,新たに設立する株式会社にその債権に係る債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割をする株式会社の債権者は,詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる(最判平成24年10月12日)
  9. 共同相続人の間で成立した遺産分割協議は、詐害行為取消権行使の対象となり得るものと解するのが相当である。(最判平成11年6月11日)

詐害行為取消をされてしまうと、せっかく行った行為が水の泡と消えてしまいます。また、強制執行妨害にも該当する可能性があります。

ちなみに、強制執行妨害目的財産損壊罪(刑法96条の2)は、次のとおりです。

「強制執行を妨害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第3号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。

  1. 強制執行を受け、若しくは受けるべき財産を隠匿し、損壊し、若しくはその譲渡を仮装し、又は債務の負担を仮装する行為
  2. 強制執行を受け、又は受けるべき財産について、その現状を改変して、価格を減損し、又は強制執行の費用を増大させる行為
  3. 金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為

安易に行うと、刑事事件に発展します。

詐害行為の恐れがある場合は、必ず弁護士にご相談ください。

みらい総合法律事務所でも詐害行為に関するご相談を受け付けています。今すぐご相談ください。