会社の破産手続きにおいて、「債権者集会」が開かれるケースがあります。
債権者集会では、債権者を集めて破産手続きに関する報告を行いますが、会社の代表者も出席しなければなりません。
そのため、「債権者集会で何をすればいいのか」と不安に思う代表者の方も多いでしょう。
ここでは、会社破産における債権者集会とはどんな手続きであり、事前に行うべき準備、債権者集会の流れなどを解説します。
債権者集会は、破産手続きの一環として開かれる会議です。
債権者集会の概要や出席者、破産者の出席の必要性など、債権者集会の基本について解説します。
債権者集会は、破産手続きにおいて裁判所が開く会議です。
債権者集会では、裁判所が選任した破産管財人によって会社の財産状況や破産手続の進捗状況、財産処分の方針などが報告されます。
また、債権者の意見を聴取や、質疑応答も行います。
債権者集会が開催される回数は、1回の場合もあれば複数回に渡る場合もあります。
最初の集会は「第1回債権者集会」と呼ばれ、破産手続きの初期段階で必ず行われます。
債権者にとっては、自身の債権がどの程度回収可能か把握するための重要な場です。
債権者集会は、全ての破産手続きで行われるわけではありません。
破産手続きは大きく分けると「同時廃止事件」と「管財事件」の2種類があり、管財事件の場合にのみ開かれます。
個人の場合、破産者に処分すべき財産がほとんどない場合は同時廃止になるため、債権者集会は開催されません。
一方で、一定以上の財産がある場合や会社の破産の場合には、破産管財人が選任される管財事件として扱われ、債権者集会が開かれます。
債権者集会は、債権者の利益を守るために財産調査や配当が必要なケースで実施されるものです。
そのため、破産管財人による財産の調査結果や換価状況が報告されます。
債権者集会の出席者は、以下の通りです。
債権者集会という名前ですが、債権者の出席は任意です。
出席しなかったという理由で不利益が出るわけではなく、出席に関係なく債権者は公平に扱われます。
そのため、出席しない債権者も多いです。
とくに会社の財産が少なく、債権者への配当が見込めない場合は、債権者が出席することはほとんどないといえるでしょう。
場合によっては債権者が1人も出席しないこともあり、その場合は数分で集会が終了します。
債権者集会には、破産者本人の出席が法律で義務付けられています。
会社破産において破産の申し立ては代表取締役などの代表者が行うため、代表者が出席します。
破産者には、自身の財産状況や債務について説明する責任があり、債権者や破産管財人からの質問に答える必要があります。
例えば、病気やケガなどで出席が難しい場合でも、診断書の提出など出席できない正当な理由を証明できる証拠が必要です。
債権者集会の開催は、会社の破産手続き開始決定後に期日が決まります。
債権者集会の実施日までに準備を行う必要があるため、債権者集会で行われる内容や流れを知っておくことは大切です。
債権者集会で行われる内容と流れは、以下のようになります。
債権者集会では、まず破産管財人が調査結果の詳細を債権者に向けて報告します。
調査対象になるものは、会社の資産・負債・取引状況・従業員への未払い分・回収見込みのある債権などです。
財務諸表や帳簿に基づいた分析や、特定の取引や財産処分が偏りの有無などの確認が行われます。
また、破産に至った原因や、直前の資金移動の内容なども報告対象です。
管財人の報告は、債権者がどの程度の債権を回収できるか把握できる場面になるため、重要視される部分といえます。
破産管財人の報告の後に、債権者が質問や意見を述べる時間を設けます。
債権者より、特定の支払いや債務整理の経緯、未回収の請求について直接確認が求められる場合があります。
また、会社が破産前に特定の債権者に対して優先的な支払いを行っていた形跡がある場合は、指摘されるかもしれません。
会社代表者は、この場での発言を通じて、債権者に対して誠実かつ明確に状況を説明する姿勢が求められます。
偏った支払いがあったとみなされれば、破産手続きにおける重要な争点になる可能性があるため、正確な事実関係の把握と説明が必要です。
債権者の発言によって、これまで明らかになっていなかった取引や問題点が浮き彫りになることもあるため、冷静かつ真摯に対応しましょう。
会社破産の場合の破産手続きの対象は法人ですが、債権者集会には破産会社の代表取締役などの代表者が出席し、説明責任を果たす必要があります。
債権者や破産管財人から、会社の経営判断や資金繰りの実態、破産に至るまでの経緯について説明を求められるため、誠実に対応しなければなりません。
説明が曖昧にすることや、不誠実な対応を取った場合、債権者の心証が悪くなるので注意が必要です。
質疑応答を終えた後は、破産管財人が今後の破産手続きの進行スケジュールについて説明します。
説明内容は、未回収資産の換価見込み、配当の可否と配当割合、次回の債権者集会の開催予定などです。
配当が見込まれる場合、どの程度の資金がどの時期に債権者へ分配されるか説明されます。
一方で、配当が困難な状況であれば、その理由や対応方針についての説明が行われます。
債権者集会では、代表者が誠実かつ適切に対応するために、事前準備が重要になります。
ここでは、会社代表者が事前に行うべき準備について具体的に解説します。
ただし、中小企業の特に問題のない破産手続では特に事前準備が必要ないことが多いです。
破産手続きでは、裁判所から選任された破産管財人が重要な役割を担います。
管財人は会社の資産状況や取引履歴を調査し、債権者への公平な配当を目指して業務を遂行します。
代表者はこの管財人と密に連携し、求められた情報や資料を速やかに提供することが求められます。
信頼関係を築くことは、手続きの円滑な進行に直結します。
また、破産に至った経緯や過去の取引内容についても率直かつ正確に説明する必要があります。
情報の隠蔽や誤魔化しは、後のトラブルや法的責任の追及につながる可能性があるため注意が必要です。
債権者集会では、債権者に対して破産の経緯や現在の資産状況、債権回収の見込みについて説明する必要があります。
この場での説明は、会社の信頼を回復し、債権者とのトラブルを防ぐ重要なものです。
代表者は、破産に至った背景や経営判断の経緯を整理し、事実に基づいた説明を行えるように準備しましょう。
準備をすることで、当日は冷静に説明を行いやすくなります。
また、債権者からの質問にも誠実に対応する姿勢が求められます。
事前に予想される質問事項を整理し、弁護士と共に説明内容を準備しておくと、集会当日も落ち着いて対応しやすくなります。
ただし、中小企業の特に問題のない破産手続では、全く質問が出ないことが多いです。
債権者集会の準備や破産手続全体を適切に進めるためには、債権者集会の前に会社の過去の取引履歴や資産状況について確認する作業が必要です。
とくに破産直前の高額な支出や、特定の債権者に対する優遇的な返済(偏頗弁済)などがある場合は、不正な行為とみなされる可能性があるため注意しなければなりません。
また、名義が会社以外の資産であったとしても、実質的に会社が所有していると判断される資産は、破産財団として扱われる可能性があります。
そのため、弁護士など専門家のサポートを受けながら、正確に取引や資産の状況を把握することが大切です。
債権者集会を含む破産手続では法的な知識が必要になるため、債権者集会で問題が出そうな場合には、弁護士との綿密な打ち合わせが重要です。
債権者に対する説明内容の精査や、過去の取引におけるリスク評価、資料の提出タイミングなど、専門的な判断が求められる場面があります。
代表者が一人で対応することは難しいため、弁護士と協力して対応方針を固めていきましょう。
また、集会当日に弁護士が同席することで、債権者とのやりとりをスムーズになります。
初期段階から弁護士に相談することが、破産手続き全体の円滑な進行につながります。
債権者集会は、破産手続きの中でも債権者の理解と協力を得るための重要な場です。
事前に注意点を把握し、適切な対応ができるようにしておきましょう。
債権者集会で会社代表者は、誠実で真摯な態度を心がける必要があります。
服装はスーツなど清潔感のあるものを選び、時間厳守で出席することは最低限のマナーです。
また、質疑応答の際は感情的にならず、冷静に対応する姿勢が求められます。
債権者から非難を受けたとしても反論や言い訳をするのではなく、事実を丁寧に説明することが大切です。
この場での態度や発言は、債権者の心証やその後の手続きの進行にも影響するため、慎重かつ誠意ある対応を心がけましょう。
債権者集会での説明において、虚偽の発言や事実の隠蔽は絶対に避けなければなりません。
とくに、資産の過少申告や偏頗弁済の隠蔽、帳簿の改ざんなどは重大な問題とされます。
そのため、破産管財人や弁護士と連携し、正確な資料と事実に基づいた説明を行うが大事です。
集会前に過去の経営判断や資産処分についても見直し、説明責任を果たせるよう備えておきましょう。
債権者集会の前後に、特定の債権者と個別に接触することは避けるべきです。
深い意味のない接触であったとしても、私的な会話や非公式な情報提供が「一部の債権者を優遇した」と受け取られる可能性があります。
そうなれば、債権者間の公平性が失われ、破産手続き全体に不信感を与えかねません。
債権者とのやり取りは、原則として債権者集会などの正式な場で行うべきです。
万が一、債権者から接触を求められた場合でも、弁護士や破産管財人に相談して慎重に対応しましょう。
債権者集会での発言と提出資料の内容には、一貫性が求められます。
事前に破産管財人や弁護士と共有している説明内容と、集会での発言に矛盾があれば、債権者からの不信を招く原因になります。
破産の原因や、資産の処分経緯、債権者への対応の履歴など、細かな点まで整理しておくことが大切です。
また、説明を曖昧にしたり答えを濁したりすれば、「何か隠しているのではないか」と疑われかもしれません。
事実関係をしっかりと把握し、質問には誠実かつ論理的に答える準備をすることで、代表者としての信頼性を確保することができます。
債権者集会で弁護士が同席する場合、誰がどの説明を担当するのかという役割分担を事前に明確にしておきましょう。
例えば、破産手続きの進行状況や法的な解釈については弁護士が説明し、会社の経営状況や破産に至る経緯などは代表者が話すなどの分担が挙げられます。
役割分担をはっきりさせることで、集会がスムーズに進行します。
また、質問への回答についても、弁護士が代わりに答える場面と、代表者が自ら対応すべき場面の線引きを事前に打ち合わせておくと安心です。
発言に食い違いが生じないように、事前の準備とリハーサルをしっかり行いましょう。
債権者集会は、破産手続きにおける重要な節目といえる場です。
事前準備と当日の対応次第で、債権者の信頼や手続きの円滑さに大きく影響します。
適切な説明が求められる場面だからこそ、専門家である弁護士のサポートは欠かせないといえるでしょう。
弁護士には破産手続の開始前から依頼すれば、手続きが円滑に進められるだけではなく、代表者の精神的負担も軽減されます。
破産手続自体は弁護士に依頼することなく進めることもできますが、複雑な手続きになるため、弁護士に相談することを推奨します。